短編 上京 武彦は息子と、もう二年近く口をきいていない。今も隣でムスッとした表情をしているだろうと武彦は思った。 息子が絵描きになりたいと言い出したのは小学生の時だった。その時は子供の他愛の無い夢と思い応援した。美術系の高校へ進学したいと言われたときに... 2023.07.04 短編
BL 義兄との話 姉さんの葬儀が済んだその夕方、義兄さんと僕は慰め合った。線香の匂いの染みついた義兄さんの身体は、汗で少し冷たかった。 慰めが必要だったのは、もしかすると義兄さんの方だけだったかもしれないし、どちらにも必要はなかったのかもしれない。 ただそうすることが、そのときの僕たちには自然なことだった。 2023.02.22 BL
BL 忘れられなくなる BL。暗いお話。高校の同窓会で、自分に思いを寄せていた相手の死を知らされる。伝えなければ記憶の中で生きられるからと言う遺書を伝えられ、忘れられなくなると思う。 2022.12.31 BL
BL 冗談じゃなくていい BL。狭山は、後輩の小日向から好意を向けられている。出張先のホテルで小日向と同室になり、迫られそうになる。冗談にしようとした小日向の腕を、狭山は掴む。 2022.12.31 BL
BL あなたの匂い BL。キスシーンあり。ヤクザの息子で引きこもりの御堂は、組幹部の小花衣と関係を持っている。小花衣がいつもと違う煙草を吸ったことに気がつきく。いつもの煙草を吸い始めた小花衣に、御堂は「ひと口」ねだる。 2022.12.31 BL
短編 道しるべ 十数年振りに父の郷里へ来た。区画整理されすっかり新しくなた道路に□□は戸惑う。大まかな方角を頼りに車を走らせると、不意に古くからある通りに行き当たりほっとした。公民館の在処を示す案内板は朽ちかけている。 元の米屋の角を曲がって、豆腐屋の三軒... 2022.09.19 短編
短編 雨宿り 一日中薄曇りだが雨は降らない。 そう言った天気予報士の言葉を信じて、□□は傘は持たずに家を出た。 学生時代に好きだった小説が完結した記念に、挿絵の原画展が行われる。□□は渋谷にあるオフィスビル内のギャラリースペースまで、その原画展を見に行く... 2022.09.04 短編
彼女に文字が読めるワケ 終章 それぞれのその後「かえって大変な目に遭った気分だ」 秋にあった裁きから季節を二つ越えて、春。一度、家族の元に帰ったセレネだが、近隣住民の腫れ物に触るような扱いに耐えかねて、神殿に避難してきている。「なんたって神の使いだもんな」「それに家族に... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 4章 神の裁き 1:陰で動くもの 「異世界転生、って言ったら信じるか? 別の世界で死んで、この世界で生まれ変わったと言ったら」 セレネの言葉に、タラッタは何の反応も返せなかった。「俺がいたのは、神様のいる世界じゃない。魔物の世界でもない。ここではないけれど... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 3章 神殿暮らし 1:神殿 タラッタは、護衛として付いてきた中隊の兵士達と別れて神殿の門をくぐった。正面に人々が祈りに訪れる表の間、その左右に廊下で繋がって建つ二階建ての建物が見える。向かって右の建物が女性の、左の建物が男性の宿舎だという。表の間の入り口の脇... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 2章 見張りに志願 1:水場を探せ それからさらに一年が経った秋、セレネは九歳になった。相変わらず雨の少ない日々が続き、今では井戸も枯れそうになっている。 幼い子供を仕事につかせたと五大神がお怒りだ。いや、魔物憑きを城に上げているせいだ。魔物憑きそのものの仕業... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 1章 幼女文官誕生 1:見習い兵士 見習い兵士のタラッタは、所在無げに保管庫の前に立っていた。扉を背にして番をすることが昼前の仕事だ。だが十歳になったばかりの子供に鐘二つ分の時間は長い。すでに緊張感は無くなっていた。 タラッタは退屈そうにあくびをかみ殺す。少し... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 序章 月夜の祈り 知之神は闇之神の眷属とされる。そのため夜に祈りを捧げるのがよい。仕事で街を出た帰り道、人目を忍んで街外れの神殿に行くには好都合だ。 月に照らされて、兵士らしく革の胸当てをつけた男が神殿の門をくぐった。小麦や木の実が入った籠を下げ... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
短編 日常1 或る朝 目覚まし時計代わりのスマホのアラームが鳴った。薄目を開けて周囲を見る。代わり映えのしない光景。半ば開いたカーテンの外はまだ薄暗い。古い磨りガラスの窓のおかげで、街の風景はいつでも滲んで見える。 スマホがアラームを鳴らし続ける。停止ボタンをス... 2021.03.06 短編
自作語り 『ひとしれずこ』作者による考察 11月4日のTwitterより肇くんも、境遇の違う夏由と仲良くなるまでには、『普通の暮らしをしてきたこと』に対する妬みや僻みもあっただろうな。それが和郎さんにある意味子ども扱いされることで精神的な安定を取り戻すとか、もえませんか? もえませ... 2020.11.05 自作語り