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持つべきものは友人

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 放課後、スーパーのフードコートで俺は、鯛焼きにかぶりついた。ここのフードコートはなかなか充実していて、ラーメン屋にうどん屋、パスタ屋、クレープ屋、定食屋、そしてタコ焼き屋が揃っている。
「タコ焼き屋で鯛焼きを買うのは邪道だろ。しかもミニサイズだし」
 友人がタコ焼きを串二本で器用に持ち上げながら言った。ソースとマヨネーズ、青のり、鰹節がかかった八個の茶色い球体が香ばしい匂いをさせて食欲をそそる。
「仕方がなかったんだよ」
 俺はタコ焼きの匂いを嗅ぎながら、甘いカスタードクリームがたっぷり入った鯛焼きを食べたせいで、味覚が、脳が、大いに混乱している。ちなみに鯛焼きは頭から囓る派だ。生地がモチモチして、サイズの割に食べ応えがあるものの、健全なる男子高校生たる俺の小腹を満たすには足りない。
「タコ焼きは一パック税込み約500円。コーラをつければ600円を超えてしまう。だが鯛焼きは二個買ってもたったの220円。130円もするコーラをつけてなおタコ焼きの値段を大きく下回る」
 友人は三つめのタコ焼きを口に入れハフハフさせていたため、俺のこの主張を聞いてはいなかった。
「つまりだ」
 そこで俺は、二つ目の鯛焼き(ミニサイズ)を、頭から半分口に入れた。粒あんは甘さ控えめだ。
「つまり、金がなかったんだろ」
「お得な方を選んだと言ってくれ」
「はいはい」
 友人は呆れたようにうなずいた。
「だいたいお前、UFOキャッチャーに500円もつぎ込んだのが敗因だろ」
「見解の相違だな。UFOキャッチャーは1回100円、しかしながら500円一度に投入すれば6回遊べる。つまりお得なのだ」
 友人の隣の椅子に置かれたゲーセンのビニール袋を見る。こいつ、たった100円で人気のぬいぐるみを捕りやがった。俺が500円で諦めた直後にだ。

 ……せこいやつだ。

「じゃあそんな金欠な友人に恵んでやろう」
 友人はタコ焼きの最後の一つを俺の口に前に運んだ。
 やはりタコ焼きはおいしかった。

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