櫻居書庫

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1章-4
「今どきの大学生ってぇのは何処で遊ぶんだ」 望が食べ終わる頃合いに、誠人が訊ねてきた。「カラオケとかゲーセンとか。あとはメシ食ったり家飲みしたり」「ダーツとかビリヤードとかは」 望は少し考えてから答える。「やる人はやるかもだけど、オレはやっ...
1章-3
誠人から貰った名刺には、名前とメッセージアプリへリンクしたQRコードだけが印刷されていた。友達登録をしてメッセージを送るとすぐに返信が来て、いつの間にか今日の約束がなされていた。 大学からそう遠くない繁華街。駅前で望は辺りを見回した。「おう...
1章-2
大型連休が終わると、大学内の学生の数が少なくなる。空席が目立つようになった教室の前の方に座った望は、教科書とノートを開いたままぼんやりと授業を聞き流していた。 望が二股をかけた末に両方から振られた、という噂は、知人や学部内で広まっているらし...
1章-1
五月。 望は従姉の結婚式に参列していた。チャペル風の建物での挙式が終わり、披露宴の会場へ移動した。親族控え室に入ると、見覚えのある男が座っていた。男は望を見ると、片方の眉を少し上げただけで何も言わずに伯父のところへ向かった。「このたびはおめ...
プロローグ
パーン。と気持ちよく音が響いた。繁華街の路地裏。橋本望は打たれた頬に左手をあてた。四月の末、春とは言え夜はまだ肌寒いと望は関係ないことを考えた。「美咲にも葵にも手を出すなんて信じらんない」 大学で同じゼミに所属している沢野遙那が言うのを、望...
目的の参考書を見つけた樫野翔太は、レジに向かう途中、文庫本の棚の前で立ち止まった。最近映画になったことで話題の作品を立ち読みする。が、翔太はそれほど面白いと思えずに買うのをやめた。平積みされている本の表紙を眺めなから棚の間を歩くが、これと言...
エピローグ
蝉が鳴いている。 俺たちは、相変わらずコンビニの前のガードレールに座っていた。 ソーダ味のアイスキャンディーが溶けて、手がべたべたになっているし、日差しを浴びた首筋がヒリヒリもしている。「あー、皮が剥けかかってるな」 悠翔がアイスキャンディ...

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