ひとしれずこそ3章

エピローグ

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 蝉が鳴いている。
 俺たちは、相変わらずコンビニの前のガードレールに座っていた。
 ソーダ味のアイスキャンディーが溶けて、手がべたべたになっているし、日差しを浴びた首筋がヒリヒリもしている。
「あー、皮が剥けかかってるな」
 悠翔がアイスキャンディーを食べ終わって、未練がましくスティックを前歯で噛んだまま、俺の首筋をのぞき込んで言った。
 
 俺は、アイスキャンディーをちびちび噛みながら、振り向いて悠翔の顔を見た。前から感じていた、腹の底がムズムズするような気持ちの悪さを、腹の底に押しとどめて置かなければならないと思った。
 
 スティックの片側にへばりついていたアイスキャンディーが、ボタッと膝に落ちた。
「冷たい」
 俺はスティックをアイスキャンディーの袋に入れた。悠翔がコンビニの袋を差し出してきたから、こそに捨てる。
「飯食ったら、夏期講習の申し込み、行くだろ」
 そろそろ学校の前にあるファストフード店も空き始めたかも知れない。
「うん。遅れている分を取り戻さないと」
「お前なら大丈夫だって」
 ようやく決まった進路希望に向けて、俺は歩き始める。
 
 高校三年生の夏休みが始まる。



ひとしれずこそ

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