彼女に文字が読めるワケ 終章 それぞれのその後 「かえって大変な目に遭った気分だ」 秋にあった裁きから季節を二つ越えて、春。一度、家族の元に帰ったセレネだが、近隣住民の腫れ物に触るような扱いに耐えかねて、神殿に避難してきている。 「なんたって神の使いだもんな」 「それ... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 4章 神の裁き 1:陰で動くもの 「異世界転生、って言ったら信じるか? 別の世界で死んで、この世界で生まれ変わったと言ったら」 セレネの言葉に、タラッタは何の反応も返せなかった。 「俺がいたのは、神様のいる世界じゃない。魔物の世界でもない。ここではな... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 3章 神殿暮らし 1:神殿 タラッタは、護衛として付いてきた中隊の兵士達と別れて神殿の門をくぐった。正面に人々が祈りに訪れる表の間、その左右に廊下で繋がって建つ二階建ての建物が見える。向かって右の建物が女性の、左の建物が男性の宿舎だという。表の間の入り口の... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 2章 見張りに志願 1:水場を探せ それからさらに一年が経った秋、セレネは九歳になった。相変わらず雨の少ない日々が続き、今では井戸も枯れそうになっている。 幼い子供を仕事につかせたと五大神がお怒りだ。いや、魔物憑きを城に上げているせいだ。魔物憑きそのものの... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 1章 幼女文官誕生 1:見習い兵士 見習い兵士のタラッタは、所在無げに保管庫の前に立っていた。扉を背にして番をすることが昼前の仕事だ。だが十歳になったばかりの子供に鐘二つ分の時間は長い。すでに緊張感は無くなっていた。 タラッタは退屈そうにあくびをかみ殺す。... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ
彼女に文字が読めるワケ 序章 月夜の祈り 知之神は闇之神の眷属とされる。そのため夜に祈りを捧げるのがよい。仕事で街を出た帰り道、人目を忍んで街外れの神殿に行くには好都合だ。 月に照らされて、兵士らしく革の胸当てをつけた男が神殿の門をくぐった。小麦や木の実が入った籠を... 2021.09.27 彼女に文字が読めるワケ