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体育祭は最後の競技、全クラス対抗の大縄跳びが始まった。
一年生から順に校庭の中央に集まって回数を競う。
「集合!」
二年生の部が終わる頃、彦田が声をあげて、クラス全員を集めた。二重の円陣を組み、手を重ねる。誰かの手の上に置いた夏由の手の上に、悠翔の手が重なった。もう片方の腕は、夏由の背中に回されている。もうこの手に、腕に、何かを思うことは許されないのだと思うと、夏由は悲しくなった。
それでも、自分の気持ちを知りながら気持ち悪がらずに普通に接してくれることが嬉しかった。
「優勝するぞ!」
「おう!」
彦田のかけ声に、クラスが一体となる。
アナウンスがあり、夏由たちは指定の場所へ移動した。
「……29,30,31」
声を揃えて数えながら大縄を跳ぶ。夏由は練習中に貰った悠翔のアドバイスのおかげで順調に回数を重ねていった。
「32,33,34,さんじゅう」
最後は結局、夏由が足を引っかけてしまった。だが、練習中含めてこのクラスの最高記録であることに、皆が喜んでいる。
最後まで残ったクラスもとうとう42回目でミスをして、競技が終わった。
学年で三位、全体でも六位という成績に、夏由もホッと息を
体育祭が終わると、教室内の話題もいよいよ受験に関することが多くなる。
先月行われた校内模試の結果が返され、夏由はその出来の悪さに落ち込んだ。悠翔の方をちらと見れば、何やら納得した表情をしていた。
「どうだった」
視線を感じたらしい悠翔が歩いてくる。
「全然駄目。D判定」
「志望校どこ」
悠翔が結果を覗き込んでくる。
「おんなじとこじゃん」
「そうなの」
素知らぬ顔を装って夏由が答える。
「合格したらまたよろしくな」
「でもこんな結果じゃ。岡田は」
悠翔の結果を見せて貰うと、C判定だ。まだ安全圏ではないものの、これからの頑張り次第という所だろうか。
「お前は去年、結構グダグダしてたからな。でもこれからだろ」
「そうだね」
「塾でも最近頑張ってるし、絶対合格しような」
悠翔の励ましに、夏由は小さく頷いた。