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百円ショップのおもちゃコーナーで、夏由はヨーヨーを探した。荷物持ちと宣言した悠翔は、カゴを持ってついてくる
「あった」
棚の隅の方に、あるのを見つけて手に取った。
「ポンプ付きだ。、持ち手のゴムもついてる」
「じゃあ、それでいいんじゃないか」
「うん」
夏由はパッケージを裏返した。
「あ、四つしか入ってないや」
二日間行われる文化祭には、一袋では足りなかった。隣を見ると、二十個ほどのヨーヨーが入った袋もある。こちらはポンプもゴムもついていない。
「何個くらい必要なんだろう」
夏由は、悠翔を見たが、悠翔は関係のないおもちゃを眺めていて答えなかった。
「射的とかもあるし、二日で百もあれば足りそうかな。余ってもしょうがないし」
「さあ、自分で考えろよ」
悠翔の反応は冷たい。
「射的の銃と、飾り用の画用紙なんかを買う分もあるんだからな」
「分かってるよ」
ひとまず二十個入りとポンプ付きを、四つずつカゴに入れた。
「あと、釣り竿に使えるもの。割り箸でいいかな。輪ゴムとクリップを付けて」
夏由はキッチン用品コーナーに目をやった。
「割り箸なんてそんなに沢山いらないだろ。そのくらいは持ってるヤツが家から持ってきたっていいんじゃないか」
悠翔の言葉に、夏由は納得して頷いた。
「クリップも、俺いくつか持ってるから、持ってくるよ。本格的にやるなら、
水に浸けているとちぎれるようなもので、何か使えるものはないかと周囲を見回す。しかし良さそうなものは無かった。
「取りあえず、輪ゴムだけでも買っておこう。ヨーヨーの口を縛るのにも使うし」
「それでいいんじゃないか」
「あとは、射的用の銃」
言いながら、棚の間を移動する。こちらもすぐに見つけることが出来た。吸盤のついた短い矢のようなものを撃ち出すもの二種類を、二個ずつ買うことにする。
文具コーナーで画用紙を選んでいると、別のクラスの女子生徒も買い物に来ていた。
「さっきいいものを見つけた。岡田くんたちも見てきたら」
あらかじめ折られているお花紙のセットだ。
「あ、便利そうじゃん。どこにあった」
悠翔が答える。夏由は画用紙の色を選ぶ振りをしながら黙って見ている。
「あっちの、パーティーグッズのほう。他にも飾りに使えそうなものもあったよ」
「見てみるよ、ありがとう」
「ううん。うちのクラス、焼きそば屋さんをやるから食べに来てね」
「うん、うちのクラスの縁日も遊んでいってよ」
悠翔の言葉に女子の一人が反応する。
「それなら、向こうにちっさい暖簾もあったよ。フインキ出るんじゃない」
「あ、よさそう」
「それにさ、うちら二組じゃん。三組の子たちが一組と合同でお化け屋敷やるから、教室交替すんだよね」
「そっち四組でしょ」
「あ、飾りとか揃えたら、もっと縁日っぽいかもね」
悠翔が女子の思いつきに賛成する。
「勝手には決められないけど、明日クラスで聞いてみるよ」
「うん、うちらも相談してみる」
飾りは相談がまとまってから改めて買いに来ることにして、今日は紙皿などだけを買うという女子に手を振ってから、悠翔が夏由を振り返った。
「だってさ」
「じゃあ、俺たちも飾りは後回しにしよう」
「苦手な飾り付けを考えなくて良くなりそうで良かったんじゃねえの」
悠翔が皮肉でも言うように言った。