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木曜日の
初日は飛行機を降りた後、クラスごとに昼食とガマの見学などの平和学習をしてホテルに移動する。二日目はそれぞれのクラスで選択した自然・文化体験を行う。夏由たちのクラスは離島の見学に決まった。三日目と四日目の午前中が班行動に当てられている。
夏由たちの班は、悠翔が主張したソーキそばの店以外のほとんどを女子が決めた。首里城とその近辺を見学した後、テーマパークで伝統工芸を体験をする。最終日も那覇の観光地で過ごしたと集合場所の国際通りへ向かう。誰からも異論は出なかった。夏由も鳴澤も、どうしても行きたい場所があったわけではないし、女子の選択も悪いものではない。
その日の放課後、夏由は母親とともに進路相談室に呼び出された。
「ご家庭ではどのようなお考えですか」
担任の言葉に、母親はやや猫背になって「はあ」など無意味な言葉を発している。
「学部なり、勉強したいことなり」
「本人がなんとも言わないものですから」
「今のところ私立の文系と言うことですが、具体的なご希望などは」
「まだなんとも。国公立は成績的にはどうなんでしょう」
母親の言葉に、担任はしかつめらしい顔をして成績資料をめくる。
「国公立は受験科目も多いですし、自分で計画的に進めないといけませんから」
母親がまた「はあ」とため息のような声を出した。
「そうするとやはり私立になりますでしょうか」
今度は担任が「はあ」と言う。
「はっきり言って、この時期に何も決まっていないようでは、ちょっと遅いと言いますか、三年生になると完全に国公立か私大か、文系か理系かでクラスが分かれますし、受験科目によって選択科目も変わってきますので……こら時城、お前の話をしているんだぞ」
場の雰囲気の重苦しさから思わずよそ見をした夏由に、担任が厳しい声で叱責した。
「申し訳ありません。全くこの子はいつもこんな調子で、全く何を考えているのか」
大人二人の視線が夏由にぶつけられる。夏由は背中を丸めてうつむいた。
「どうなんだ」
「とりあえず、文系で」
「とにかく、早めにご家庭でも話し合ってください。冬休み明けの希望調査を元に三年生のクラス編成を行いますので」
何の結論も出ないまま面談は終わった。夏由はその場から解放されたことにほっと息をついた。