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新潮文庫版
以下ネタバレあり
「正義と微笑」
主人公の、少年期から青年期になるまでの物語。日記形式で書かれています。
挫折を感じるごとに、俳優になろうと思う主人公。兄は小説家を目指しているものの、作品はあまり書けていない様子が見られます。
父はなく、長いこと伏せっている母と、作中で結婚する姉、その夫、伯母などとの関わりが書かれています。
姉が結婚して、主婦(おかみさん)へと変わってしまった場面が印象に残っています。
カサカサに乾いていた。ふくよかなものが何もなくなっていた。利己的にさえなっていた。
こんな表現が印象的でした。
一高受験の失敗など、挫折の話かと思って読み進めたら、劇団での成功を予感させる終わりが意外でした。
「パンドラの匣」
結核の療養施設の話。主人公ひばりが友人に宛てた手紙の形式で書かれています。
実は恋愛の話と言うところが面白かったです。
マア坊と竹さんという二人の女性に向けられたヒバリの視線から、ヒバリはマア坊の方を気に入っているように読み進めていました。
竹さんの結婚を知り、ヒバリが自分は竹さんに恋をしていたのだと友人宛の手紙で打ち明けるとことが印象深かったです。